土鬼模様のはじまり
さて、今回は土鬼模様の調査をはじめた頃の話をしたいと思います。
「闇の土鬼」にハマってふと気になったのが、主人公土鬼の着物の模様でした。交差した2本線と、4つの点で描かれた模様で、名前が分からなかったので勝手に“土鬼模様”と呼んでいます。作中では模様について一切説明がありませんが、全29章中2章から16章まで、物語の半分以上の場面にこの模様が描かれています。
伝統的な着物の模様の中には、意味があったり、縁起を担いでいるものもあります。
例えば、海の波がモチーフの青海波模様は、未来永劫続く平和な暮らしなどの意味があり、古くから縁起の良い模様とされています。「闇の土鬼」の物語を読み進めていく中で、模様の正体は何なのか?なぜ主人公の着物の模様に選定されたのか?疑問に思い、調べてみたいと思いました。
ちなみに、後から横山ファンの方々に聞いてみたところ、シンプルな図形であるせいか、土鬼模様が何であるか気にせず「闇の土鬼」を最後まで読んだという方がほとんどでした…な、なんでだ~!(笑)
調査は、手始めに地元の本屋や図書館にある着物の資料集、紋様の辞典、デザインの本など手当たり次第同じ模様を探すことからはじめましたが、一致する模様を見つけることができませんでした。ただし、横山光輝の「鉄人28号」(1956年『少年』)でもカーテンに同じ模様が使われているのを見つけたので、諦めずに漫画から使用例を集めてみることにしました。
調査は、ジャンル、作家、年代問わず漫画作品から、模様の使用例をサンプリングしました。残念ながら個人では買える漫画も、ジャンルも限られてしまうので、2015年ごろからツイッターに模様の描かれている作品のリストなどを公開し、フォロワーや、横山ファンや漫画コレクターの方などの協力を仰ぐことにしました。
ご協力くださった方の中でも情報提供数が多かったのは、横山作品のコレクターでファンの交流会などを主催されているまんだらけの今入さんと、地元の漫画コレクター兼研究家の原田さんです。ちなみに今入さんとは、ツイッターのフォロワーさんからご紹介いただいて、今入さん主催の横山ファンの交流会「横山光輝ファンミーティング」に参加した時にお会いしました。また、原田さんは地元のまんだらけの店員さんに紹介していただき、コレクションの漫画をたくさん見せていただきました。今もメールやツイッターで交流が続いていて、お二人には感謝でいっぱいです!
さらに、調査の進捗をツイッターや横山光輝ファンミーティング等で報告し、色々な方からアドバイスや情報提供をいただきました。おかげで2019年時点で模様が書かれた漫画の作品数は100件を超え、模様の調査に興味を持ってくださったまんだらけの國澤さんからご依頼いただき2020年8月の資料性博覧会13で動画講演をさせていただきました。正直、模様のサンプリングをはじめた頃は使用例が100件超えるとは思ってなかったですし、使用例を集めたことで土鬼模様のもとである堀江卓先生の漫画「矢車剣之助」という名作に辿り着けるとも思ってなかったです。
さらに、近年は模様の調査がきっかけで横山漫画以外の昭和漫画も読むようになり、同人誌の投稿もさせていただけるようになりました。人生何が起こるか全然予想できないですね~!(笑)
調査を通して痛感したのは、漫画は絵と文字を組み合わせた複雑で奥が深い作品形態だということです。未だに世間では、漫画や児童向けの読み物は深読みの余地がないと決めつけられる傾向がありますが、漫画も児童書も掘り下げて読む余地が充分あると思っています。将来は、漫画も児童書も良い作品が評価され後世に残る時代になって欲しいです。
今回は以上です。次回は、横山光輝ファンミーティングや資料性博覧会13に参加した話なども書きたいと思っていますので、お楽しみに!☆彡
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